外資系のエアラインにおいては、どのくらいの英語力が必要とされるのか見てみましょう。
日系の航空会社ではTOEICスコアを550点から600点程度とする傾向が数年続いています。万が一スコアが満たなくても、他の才能や自分の強みをうまくアピールすれば不足分をカバーできるという話を前回しました。
CAになるためにTOEICスコアはどのくらい必要か【国内航空会社】
外資系航空会社になると、やはり高い英語力を求められます。しかし、やみくもにTOEICの高得点を取ればよいというわけではなく、ここできちんと国際線CAに必要とされる英語力についての理解をすることで、今までと世界が全く変わって見えるかもしれません。
目次
外資系の各エアラインが採用条件として明記している英語力を抜粋してみました
まず、日系エアラインの記事内で参照したように、こちらもいくつかピックアップして見てみましょう。
エミレーツ航空
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Fluency in written and spoken English (additional languages are desirable). エミレーツ航空公式サイト
スイス航空
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Mother tongue Japanese; very good English skills スイス航空公式サイト
タイ・エアアジア
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TOEIC Score of at least 650 points with two years validity AirAsiaThailand タイエアアジアFacebook
シンガポール航空
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High level of English proficiency シンガポール航空公式サイト
キャセイパシフィック
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Fluency in English and one of the following languages: Cantonese, Mandarin, Japanese, Tagalog or Korean. A third language is preferable. キャセイパシフィック採用サイト
エバー航空
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専門学校卒以上かつ英検2級(TOEIC500点、TOEFL IBT45点、TOEFL ITP450点、IELTS4.0、BULATS40点)以上の2015年新卒者及び既卒者。面接時に卒業証明書を提出できる方 エバー航空採用サイト
ここまで見てきてお気づきかと思いますが、意外にもTOEICスコアを明記しているところは少数なのです。「Fluent」や「High level」「Good skill」という抽象的な表現でまとめられているところが多いのです。なぜこんなにもざっくりとした記載をするのか、実際のところ、何点くらい取ればよいのか?
CAとして外資系エアラインで日本人クルーが求められる役割を考えてみよう
突然ですが、下のストーリーを読んでください。
ベトナム人のSさんは、日本の国立T大学への留学が決まった。
Sさんは成績優秀なため、奨学生としてT大学から招かれる形となり、T大学の国際センタースタッフが手配したANAの成田行きに乗り込んだ。
まだSさんは日本語がほとんどわからず、ベトナムではベトナム語が公用語であるため機内アナウンスが英語・日本語で流れても何を言っているのかわからず不安になった。
しかし、ドリンクサービスでまわってきたCAが「Anh có muốn uống gì không?」(ベトナム語で「お飲み物は何にしますか?」)と言っているのを聞き、彼女のネームプレートを確かめ、そのANA便にはベトナム人クルーが1名乗務していることがわかった。
Sさんは成田空港到着までの約6時間、留学の不安と緊張がありつつも、安心して過ごすことができた。
Sさんを主人公にしましたが、あなたに見てもらいたいのは、この時、ANA便に乗務していたベトナム人の客室乗務員のことです。(仮にMさんとしましょう)
Mさんは、全日本空輸に勤める客室乗務員ですね。ベトナム人であるMさんにとっては、全日空は”外資系”の航空会社です。そして全日空から見ると、Mさんは「外国人クルー」ということになります。
会社がMさんに求めているのは、ベトナム人留学生Sさんの「安心」を与える存在になること。Sさんがどれほど安心したか、想像できますよね。
外資系のCAを目指している方は、このMさんのような境遇になるのです。
では、ストーリーからいったん離れてもう一度考えてみてください。外資系CAとして求められるのは本当に「英語力」でしょうか?
確かに、外国の会社に勤めるということはすなわち、業務が全て英語(英語圏でなくてもグローバル企業の公用語はたいてい英語)ですから、英語ができないと生活そのものに支障があるでしょう。
しかし、航空会社の客室乗務員として「外国人クルー」を募集するのは、そのクルーと同じ国から来るお客様への対応力を増強するためです。
私たちに置き換えれば、事実上は「日本語を話す日本人クルー」が求められているのです。
だから、採用条件には「Fluent」や「High level」「Good skill」という抽象的な表現が並ぶのです。
もちろん、お客様対応以前の問題で、国際的なメンバーの中できちんと日本人というアイデンティを保ちながら、言葉の支障なく働ける能力がなくてはなりません。
外資CAになるための、具体的なTOEICスコアの基準
外資系の航空会社に勤めるための英語力は、上でお話したとおりです。
でも、やっぱりスコアの基準が知りたい!という人に。
私がこれまで数々の航空会社の採用試験を見てきたところ、TOEICは750点〜780点が書類審査における”足切り”として使われることが多いように感じています。
TOEIC750〜780点というと、「できることの目安」として次のようなものが挙げられています。
TOEICスコア 700~795 |
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TOEIC公式サイトより
私自身、外資系航空会社においてCAよりも英語力が必要とされる総合職の経験がありますが、スタート時が750点、それから業務を経ることで定期的に受けていたTOEICスコアも徐々に点数が上がっていき、800点を超えていくようになりました。
世界各国のTOEICスコアの基準に対する認識の誤差も知っておこう
ただし、ひとえにTOEICスコアと言っても、英語ネイティブ国と英語が公用語ではない外国とでは、「Fluent」や「High level」「Good skill」の程度がそもそも異なるということも理解しておきましょう。
簡単にまとめると、欧米系エアラインではネイティブレベルで英語が話せることが必要とされる場合が多く
アジア系、中東系エアラインにおいてはTOEIC600点であっても国内系でお話した基準のように、他にアピールできるものがあれば、(見た目のインパクトが外資系では大事)採用に合格することもあります。