CAになるためにTOEICスコアを600点台に乗せることやできるだけ高い点数をとることばかりに注力しているよりも、実務的(実用的)な英語力を少しずつ伸ばしていくことにも取り組んだほうが有利なのは明らかです。優先順位は人それぞれですが、“実務的(実用的)な英語力を少しずつ伸ばしていくこと”にスコアは関係ありません。すべての人が今日からできる具体的な対策があります。この記事では、今のあなたがTOEICやTOEFLで何点を持っているかに関わらず、スコアに縛られない自然な英会話力を伸ばしていくポイント、コツ、マインドセットをご紹介していきます。
英語力が低かった合格者の例
私が合格をサポートさせていただいた受講生のTOEICスコアは結構ばらばらです。
- TOEIC540点でも外資系航空会社のCAになった人
- TOEIC600点台からなかなか抜け出せなかった人
- TOEIC800点以上を持っていても合格まで苦戦した人
実際にこういう合格者がいるという事実を知ると、スコアばかりに気を取られていることがどれだけもったいないことかわかると思いますし、これがこれから書いていく内容の根拠でもあります。TOEIC600点という採用基準値は日本で広く使われているスコアではありますが、TOEICの点数が600点以下でも合格している人が英語に関してどのような対策をしたのか?また、CAになるためには実際はどの程度の英語レベルが求められているのか?この記事を読み終わる頃には、その実態と、合格の鍵である“数値化できない英語力”とは何か、そして具体的にどんな対策をすればよいのかが見えるように書いていきます。
スコアに左右されない英語力とは?
日本人が英語が苦手な理由はいろいろあると思いますが、「英語を使って何がしたいのか?という目的が明確になっていないためにやるべき優先順位のつけ方が上手くない」ということが要因の1つであると私は見ています。これはまさに、CA合格に必要な英語力を付けるときにも同様です。ですので、CAに合格するために必要な、TOEIC・英検・TOEFL等のスコア以外の英語力とは何かを整理しましょう。大きく3項目あると考えてみてください。それが下記の3つです。
1. 英語を使った試験項目に対応するための英語力
2. 国際的な経験やバックグラウンド(英文履歴書でいうところのInternational Experience)
3. 非言語の印象や立ち振舞い
1つめは、英語を使った採用試験(記述式問題、選択問題、英語の小論文、英語での面接、英語でのグループディスカッション、英語でのロールプレイングなど)で用いる実務的な英語力です。
2つめは、外資系航空会社を受験する際に準備する英語レジュメ(CV)の必須項目ともいえる“International Experience”。英語を使ってどのような経験があるのか、留学経験、実務経験、実績等のことです。
3つめは、あなたが話していない時の表情(※)・視線・姿勢や、面接官・受験者が複数いる場合のあなたのポジション取り・態度などのことです。英語でのコミュニケーションと日本語でのコミュニケーションではそれぞれの文化背景を汲んだ特徴が異なるので、外資系航空会社の試験と日系航空会社の試験では異なるスタンスをとることを前提に対策するのがポイントです。
このように、英語が必要なCA受験では、TOEIC・英検・TOEFLのスコアだけにこだわっていると盲点となりがちな要素がたくさんあります。そういう要素によって実は合否が決まっていることがあるかもしれないということを心に留めてください。では、どういうところでこの“スコアに左右されない英語力”に差がつくのでしょうか?いくつかのアイディアをランダムに挙げていきます。
ビジネスシーンで使える英語にする簡単な方法3つ
◆英語での「丁寧語」「謙譲語」の表現を使えるようにする
自分の言いたいことをうまく英語にできない原因の多くは、日本人特有の丁寧さ・謙遜を英語で表現しきれないことにあります。とはいえ、英語でもフォーマルな場に相応しい表現があります。例えば下記のような表現です。
例)依頼・お願いするとき
Can you~? よりも Could you please~?
例)許可を求めたり伺ったりするとき
Can you~? よりも May I~?
例)感謝の意を表すとき
1. Thanks よりも Thank you so much. / I appreciate your ~
例)丁寧に相槌や返事をしたい時
2. Yes,No よりも Sure. / Absolutely. / Yes,I do. / Yes, I am. / No, I don’t. / No,I’m not. / I’m afraid I’m not.
こういったシンプルな言い換えで、日本語における目上の人に対する敬語・フォーマルな場での丁寧さを表現できます。あまり難しく考え過ぎずに語彙を増やし、頻出質問への回答を実際に作ってみることが対策として有効です。
また、日本語は主語が抜けても意味が通じることがある言語ですが、英語は主語が抜けることは絶対にありません。ですので、英語では主語述語を用いた完全体で文章を言い切るということを意識するだけでもフォーマルな英語に近づきます。そういうシンプルな文章でも、「反射的に受け答えができる」という状態を目指すことが英語面接通過の対策ポイントとなるでしょう。
◆英語と日本語の言語的な文化の違いを把握する
言語学(文化人類学)において、日本語は高コンテキスト文化、英語は低コンテキスト文化と分類した学者がいます(1976年、米、エドワード・ホール)。コンテキスト(Context)は文脈という意味で、
- 高コンテキスト文化(高文脈文化)=実際の言葉が言葉以上の意味を含み得る言語文化
- 低コンテキスト文化(低文脈文化)=言葉そのものが緻密性を持ち、その言葉以外の意味を含みにくい言語文化
ということです。つまり、日本語は「あまり多くを言わなくても雰囲気や感じで伝えられる」ことが多いということ)。「一つの言葉に多くの文脈が入る」という言語的な文化を持っています(アラブ圏や中国も同じ)。
反対に、英語は言葉に含めることができるコンテキスト(context=文脈)が日本語に比べて少ないため、低コンテキスト文化と呼ばれているわけです(ドイツやスカンジナビアも同じ)。
このような言語における文化の違いから、低コンテキスト文化である英語を使う時に気をつけたいことは、
少ない単語で話してしまうとあっけなく会話が終わってしまう
という特徴があるということです。さっきも書いたように英語を使うときは主語述語を用いた完全体で文章を言い切るのを意識するのに加えて、日本語で話す時よりも状況や心境に関する情報量を増やすつもりで話す意識を持つと、自然と“伝わりやすく”なります。文脈となる要素を増やすのです。こうすることで、“感じの良い”印象を相手に残すことができる英会話になっていきます(こうした言語文化的背景を考慮しておくと、英会話ならではの「スモールトーク」や「アイスブレイキングトーク」においても自然な受け答えができるようになります)。
例)情報量を増やすことで自然な会話を演出する
ex)「How did you come here today?」という質問に対して
Train. だけよりも、I came here by train. It was so crowded.(+状況)
ex)「Did you sleep well last night?」という質問に対して
Yes. だけよりも、Yes, but I was a little bit nervous because I was thinking about today’s interview.(+心境)
◆英語面接は「型」で乗り切る
客室乗務員試験に合格するための自然な英語力を身に着けていくためには、英語をスコアとしてではなくて生きるツールとして捉えてみましょう。言語には文化的・歴史的背景を汲む特徴があるので、英語を使った時にも自分の表現したいニュアンスが忠実に伝えられるようにするためにはどうしたら良いのか、この記事を参考にして自分なりに文章を作り、自分の中に“表現のデータベース”を作っていきましょう。
一口に英語・英会話と言っても、上を目指せばキリがありませんし、CA受験に合格するためには、流暢に話すことばかりに気を取られて途方に暮れてしまう時間はありません。ひとまず、客室乗務員試験で使う英語・英会話の特徴や本質を把握し、それに通用するだけの表現の数・表現の型を自分なりに持つ対策をしていくことが合格に繋がりますよ。
まとめ
CAに合格するための英語力・英会話力を身につけるポイントは
- 「生きるツール」としての英語を磨く
- 文化の違いを把握し、言語の表現や非言語の振る舞いに活かす
- CA受験に特化した英会話の「表現の型」を持つ
- 丸暗記ではなく、言葉を紡ぎ出す力を自分の中に醸成させる
このような心がけで対策をすることで、自然な英会話力はもとより、実際に英語を使ってCAとして働く実務力も付いていきます。私自身も、CA受験をしていた頃から、外資系の航空会社に勤めていた時、そして今も日々頑張っていますので、一緒に頑張りましょう。